「塙保己一 知的財産管理の先駆者」 (平成27年9月分)

更新日:2020年10月01日

 おはようございます。9月1日になりました。今月の月いちメッセージをお送りします。まずはゆるきゃらグランプリにおける「はにぽん」の躍進。本人になり代わりみなさんにお礼申し上げます。ありがとうございます。しかしまだ先は長いです。どうしても土曜日、日曜日が弱いです。支持層が良く分かる健全キャラではありますが、なんとかみなさんにもう一声ふた声お声掛けいただき、土曜日、日曜日も忘れず投票を!と本人も申しておりましたので、よろしくお願いいたします。
 さて9月になり、はにぽんプラザとアスピアこだまが出来て最初の夏休みが過ぎました。はにぽんプラザは連日中高生が数多く使用し、塙保己一記念館についても来館者が7月だけで1300人を超え、夏休みということで親子連れの人もお越しになりました。
 私も遠くからのお客様には、はにぽんプラザで山車をご覧いただき、そして塙保己一記念館にお連れしています。記念館では、まず塙保己一の生涯を紹介する12分のビデオを、そのあと記念館の展示をご覧いただくのですが、お連れしたみなさん一様に「すごい人がいたんですね」とか「今まで名前はともかくどんな人だったか分かりませんでしたが、よく理解できました」と仰います。短時間で塙保己一の人物像や業績が分かるように工夫された記念館ができて、本当に良かったと思います。
 さて塙保己一の群書類従の編さんについては、多くのみなさんすでにご存知と思いますが、これは当時の我が国における古今のさまざまな文献を収集し、それを校訂・注釈し、分野ごとに系統立てて整理し、版木にして残したという事業です。いわばデータベース作成と、情報を精査し必要な情報を引き出すという、いわばメディアリテラシー向上の、我が国における先駆けであると言えるでしょう。
 一方これは情報の共有という面でも先駆的な事業でした。一つ例を申し上げますが、みなさんは庭造り、造園作業に大きな影響を与えている「作庭記」という文献をご存知でしょうか。今や現代語訳も出ていますし、ネットでも読むことができます。庭の作り方、池や石の置き方や植栽、また建物と庭のあるべき配置、それらの注意事項、またタブーなどについて、平安時代に記されたとされる我が国最古の造園のテキストです。
 が、この作庭記、江戸時代までは長らく一部の人しか見ることのできない秘伝の書でした。それが現代では造園を志す人のバイブル的存在になっております。なぜ秘伝の書だったのが今では広く知れ渡っているのか、それはまさに塙保己一の群書類従に収録されたことで広く誰でも読めるようになったからです。
 このことを私は塙保己一研究者の長谷川典明先生から教えていただきました。内容が世のため後のためのもの、であるにも関わらず、書かれてから数百年も秘伝の書とされていたからこそ、これは収録・公開して残すべきという判断が働いたのでしょう。まさにより良い情報を開示して、みんなで共有する、今で言うところの「シェア」することの先駆け的な事業であり、そんな観点から塙保己一という人物の成し遂げた業績の意義というものを改めて見直してみるのも、大いに有益なことだと思います。
 ところで今世間では、東京オリンピックパラリンピックのエンブレムのことが話題になっております。事の真偽についてここで論じることはしませんが、あの騒動を見てつくづく感じるのは、これだけ大量の情報を誰もが瞬時に受け取れる高度情報社会において、デザインや文章などの知的財産の取り扱いは、本当に難しいな、ということです。
 ちなみに塙保己一の群書類従の編さんにおいては、収録する書籍の所有者に収録の許可を得ることはもちろん、その原本の作者は誰かということまで詳しく調べて収録されています。このことから、知的財産権の保障あるいは情報に対するモラルという点からも、先駆的な事業であったと言えるでしょう。
 なお知的財産についてということで全く余談ながら、冒頭お話しした「はにぽん」についてですが、ある人から「はにぽんは商標登録されていないのですか」と聞かれたことがあります。「はにぽん」の場合、商標登録という形とは逆で、誰からも商標登録がされないよう、法に基づき特許庁に申請してあります。特定の人が独占しないよう、そしてみんなが使用できる形をとっているわけです。万人に開かれた知的財産の活用について現時点で最もふさわしい方法だと思います。
 まとめます。今日は主として塙保己一の業績を、高度情報社会における知的財産の扱いという課題に関連付けて話しました。どんなに法的な整備がなされたとしても、最終的には情報を扱う人間のモラルこそが、時代を超えて最も大切なことだと思います。そういう意味で、今こそ塙保己一の姿勢に学び、知的財産管理のあり方についての先駆者、情報モラルの先駆者としてもっと世に広く知らしめても良いのではないか、と感じるところです。
 以上申し上げて今月の月いちメッセージを終了いたします。今月も頑張ってまいりましょう。

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