「つなぐ」と「縁」 (平成29年12月分)

更新日:2020年10月01日

 みなさんおはようございます。12月1日、今年もあっという間に師走を迎えました。本年最後の月いちメッセージをお送りします。
 私は今年の念頭の挨拶で、この一年大事にしたい言葉として「つなぐ」を掲げました。11か月が過ぎ、振り返ってみてこの言葉にふさわしい年にできたかどうか、自問自答しております。
 「つなぐ」と聞いて思い浮かぶ言葉、私の場合それは「縁」・「えにし」という言葉です。この「縁」という言葉、もともとは仏教用語です。今では「ご縁がありまして」あるいは「ご縁がなかったということで」などと、おもに男女の仲の話とか、就職試験や入試の合否の時などに多く聞かれる言葉ですが、実際はもっと幅広い意味で、人と人とのつながりはもちろん、もともとは世の中の森羅万象がお互い関係し合っている、その関係そのものを表す言葉です。「つなぐ」と聞いて私の場合は「縁に出会う」また「縁に気付く」あるいは「縁を活かす」などという言葉が思い浮かぶところです。
 みなさんは次のような格言を聞いたことがあるでしょうか。「小才は、縁に出合って縁に気付かず。中才は、縁に気付いて縁を活かさず。大才は、袖すり合う縁をも活かす」。

 これは江戸初期の剣術家、柳生宗矩(むねのり)の遺した格言と言われます。この場合の「縁」とは、人間同士の出会いが生み出すチャンス、とでも訳してみましょうか。小才つまり人間の器量が小さく狭い者は、そんなチャンスに出会いながらも、そのこと自体に気付かない。中才つまり平凡な人間はチャンスに気付いていながらも、それを活かすことができない。そして大才つまり器量の大きな人間は、ほんの小さな出会いをもチャンスとして活かし、未来に大きな結果を生み出せる、ということです。
 おそらく高校生の時であったか、私自身この格言に初めて出会った時、ああそうか、と強い印象を受けたことを覚えております。器量も狭く小さな自分であるけれど、しかしなんとかがんばって、この格言に言うところの「大才」、大きな器量を持って縁を活かし、未来に結果を生み出せる人間になりたいと強く感じました。
 しかし、実はその頃の私は、この格言の意味の理解が大変浅かったようで、今思い返すと赤面の至りです。縁を活かすと一口で言っても、誰がどのような縁を何のために活かすのか、という熟慮もなく、ただ自分自身がさまざまな経験を積み人間関係を広げれば良いのだ、くらいにしか考えておりませんでした。これでは縁を活かすといっても、それはあくまで自分が自分の人間関係を、自分のために活かせば良い、であり、そんな自己中心的な人物に人は魅力など感じてはくれません。
 自分だけでなく相手も、相互に資するところがあって本当の意味で縁が活かされたということになるのであって、およそ人のために汗をかけない人間は、他人からも決して手を差し伸べてはもらえない、ということを、私自身も時に痛い目に遭いながら学んできたように思います。
 そしてまた、これは最近になってつくづく感じるのですが、他人のために汗をかいたことを、いつまでも他人のために俺はやったと思い込んでいるようでは、やはりそこで人間の成長は止まる、ということです。
 先般セルディで地域福祉に関するフォーラムが開催され、退職後にボランティア活動をしている方がパネリストで参加されていましたが、その方がおっしゃるには、ボランティア活動をしていて感じるのは、他人のためと言いながらも実は自分がさせていただいている、このような活動ができることに感謝したい、というのです。
 人のためにという意識から、させていただいているという意識へ。そのような他者への感謝の念をもってこそ、「縁」はチャンスとして活き、将来に自他共にそれなりの良き結果がのこせるのではないかと、私もこの年になってようやく感じて来たところです。
 そろそろ話を締めくくりますが、実は「縁」とは、世の中の森羅万象が元々どこかでつながっている、ということを意味しております。従って「つなぐ」という言葉は、切れていたものをつなぐというより、もともとつながっていることに気付いた、というとらえ方が正しいのかも知れません。これは逆から言えば、切りたいと思っても切れないのが人間のつながりであり、そういう場合は無理に切ろうと思わず、つながっていることをどこかで受け入れて上手くやりくりしていくことも、また人生の達人の生き方なのかも知れません。
 とりとめのない話になりました。本年最後の1か月です。みなさんが元気で仕事ができますようお祈りして、今月の月いちメッセージを終わります。

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