平成回顧 ~高度情報化時代を考える~ (平成30年12月分)

更新日:2020年10月01日

 みなさんおはようございます。今月の月いちメッセージをお送りします。
 さて、平成の世もあと5ヶ月で終わり、来年5月1日からは新元号に改められます。今回の改元のあり方は、明治以来の出来事です。端的に言えば、いま私たちは平成という元号がいつ終わるのか、ということがあらかじめ分かっている、これは昭和時代とは全く異なる状況です。
 改めて伝統というものは常に変化しながら継続して行く、ということを実感します。今日はこの平成の30年間を振り返ってみたいと思います。
 多くの人々が指摘する様に、この30年間は日本のみならず世界全体で高度情報化が急速に進展したこと、地球規模での環境問題が起きていること、そして我が国では災害が多発したこと、などさまざまな出来事がありました。今日は世界全体での高度情報化についてお話したいと思います。
 私は平成元年、1989年の夏から一年間、台湾に留学しておりました。当時、携帯電話などはなく、国際電話はとてもお金がかかり、日本の家族とのやりとりは基本的に手紙でした。
 それが今では、例えば一昨日の1日土曜日、同じく台湾の台南市にある林(HAYASHI)デパートが主催するパレードに本市マスコットのはにぽんが参加し、台南に行った副市長や次長と、大阪にいた私はラインでやりとりをし、パレードの写真を送ってもらいFacebookでアップしました。こうしたことが当たり前に出来る社会となったわけです。
 今申し上げたFacebookなどのSNSの発達によって、情報の発信という面でも大きく時代は変わりました。現在、社会的に影響力のある情報発信源は依然として大手マスコミですが、個々の人や組織が、自ら情報の発信源として注目される時代にもなりました。
 情報の受け手としての私たちを取り巻く環境ですが、もはやニュースもネットで見るのが当たり前の時代です。今後新聞やテレビ離れは、若い世代を中心にますます進むでしょう。しかし一方、実は人間はそれぞれ好みというものがあります。スマホであれパソコンであれ、使う人間の好みの傾向をネット環境がどんどん覚えてしまい、その人の好みの情報がその人に大量にもたらされ、一方で、自分の関心の無い情報は知らず知らずのうちに入ってこなくなると言われています。
 大量の情報に瞬時にアクセスできる現代社会は、人や組織が自らの力を大いに開花させることが出来る反面、ネットがもたらすさまざまな弊害も指摘されているところです。
 そして膨大な情報があふれる世界は、政治や経済の面も急速に変化しつつあります。先日、Yahoo! CSOの安宅和人氏の講演を聴く機会がありました。内容は色々と刺激的なものでした。世界的な高度情報化によって膨大なデータの蓄積が可能になるなか、さまざまなデータを科学的に扱い駆使するデータサイエンスの分野において、日本は今や米国や中国に大変な遅れをとっており、国のポテンシャルは相対的にかなり低下し始めているということ。そもそも蓄積するデータ量で勝負になっておらず、そのデータから価値を生み出すコスト競争力も無い、このままでは早晩アジアの中でも大変な遅れをとってしまう可能性が高く、理系の、しかもデータを扱う高い志あるスキルを身につけた人材の育成が急務であるという、手厳しいしかし的確な指摘でした。
 一方、このような世界的な潮流のなかで、これまで当然とされてきた人類社会のモデル、価値観が揺らぐ重大な岐路に、今私たちは立たされています。それは、およそ国や社会の経済発展は、その国その社会における一人一人の人権の尊重や、自由な言論また民主主義の成熟と「パラレルであるというモデル」、「パラレルであるべきという価値観」、これらが否定されかねない巨大な経済社会が出現しつつあるということです。
 例えば中国では、膨大なデータの蓄積が、国家による社会全体、個人個人の監視に活用され、その傾向が経済発展と相まってますます強められていると言われます。ビッグデータの把握と活用による経済発展は、人間の尊厳や自由、そして民主主義を保障する体制ではなく、逆に制限する体制、統制管理の下でこそ大きく成果を上げるのだ、というモデルを、「それで良いのだ」という価値観のもと、作ろうとしている国家があるということです。これは世界的な脅威になることが懸念されます。
 このような巨大な潮流のなかにあって、私たちの日本は、日本社会は、地方自治体は、国民一人一人は、どうすべきでしょうか。混沌とした状況の中、来年我が国は時代の区切りを迎えようとしています。
 世界から見れば、日本の社会において天皇陛下のご譲位による改元があったからといって、巨大な高度情報化時代の世界的潮流への影響など、直接的には皆無だと思います。が、私たち日本社会に生きる者は、この改元ということを時代の区切りと意識して、それまでの時代を顧み、今後の国や社会そして自分自身のあり方に思い巡らす機会を自然と得ることになる、これも事実です。節目節目で、謙虚に過去を顧み、未来にたくましく挑戦できる、私たちの国はそうあり続けたいものです。
 慌ただしい中にも、世のため後のために何をなすべきかを考える平成最後の年末にしたいと、私は思っております。みなさん、いかがでしょうか。
 以上で本年最後の月いちメッセージを終了いたします。御用納めまで、頑張ってまいりましょう。

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