老舗を支える職人の言葉に学ぶ(平成20年3月分)

更新日:2020年10月01日

おはようございます。今月の月いちメッセージをお送りします。
先日ある職員の方から、面白い本だからと、NHK教育テレビ講座『長寿企業は日本にあり』という番組のテキストブックをいただきました。これは昨年の12月から今年の1月にかけて教育テレビで放映されたので、ご覧になった方もいると思います。
「老舗(しにせ)」と聞くと伝統的な工芸品や和菓子などのお店を想像してしまいますが、この本を読んでその実態に驚きました。最先端の技術、例えば携帯電話の折り曲げ部分には非常に薄い、そして強靭(きょうじん)な銅の箔(はく)、(箔は金箔の箔です)使われていますが、これは300年以上続く京都の福田金属という企業の、金箔を作る技術が応用されたものだそうです。その他にも、香川県で150年続く勇心酒造というお酒屋さんが、米の醗酵(はっこう)にヒントを得て、副作用がないアトピー性皮膚炎の治療液を開発したことなど、まだまだあるのですが、このように日本のさまざまな老舗企業の姿をこのテキストブックでは紹介しています。
このテキストを編集したジャーナリストの野村進さんによれば、実は日本は世界第一の長寿企業国であり、世界最長の1430年続いている宮大工、社寺建築業の金剛組をはじめ、100年以上続いている老舗は全国で約15,000軒、200年以上続いている老舗も約3,000軒以上あるそうです。アジアで200年以上続いている老舗は中国でわずか9軒、インドで3軒。ヨーロッパでもドイツが800軒、オランダで200軒。いずれにしても3000軒の日本は群を抜いています。外国による大規模な侵略や内戦による破壊が少ない歴史が、これだけの企業を育んできたとも言えます。それでも明治維新以降の我が国の歩みは企業にとって過酷な歴史であったに違いなく、よくぞ乗り越えてきたというのがそれぞれの経営者の本音ではないかと思います。
私がこの本を読んで感動したのは、日本の老舗には、自分たちが扱う原材料や製品を、単なるモノとして扱うのではなく、全てのものに命がやどり、その命によって自分たちが生かされ、また自分たちがそれに関わることで、それらをより活(い)かしてゆく、そんな姿勢がある、ということでした。
老舗を支える職人の言葉を3つ紹介します。
「麹菌(こうじきん)が一番良く働いてもらえるような環境づくりをするのが我々の役目」これは味噌(みそ)職人の言葉。
「金箔は人の心を読む。機嫌の悪いときには言うことをきかない」金箔職人の言葉。
「貴金属が、世の中に出してくれ、出してくれ、と言っているものを引き出してやるのが我々技術屋の仕事」これは貴金属加工会社の職人の言葉。
こういった「活かし、生かされ」という精神は、どの企業の家訓、社訓にもよく現れています。そこでは、おしなべて拝金主義、投機的行為に走ることを厳しく戒め、社会に喜んでもらえる、役に立つ、良いものを作る、ことがうたわれています。自分たちを生かしているすべての存在への感謝と、モノの本来持っている力を引き出して、皆に喜んでもらうことが自分たちの使命である、そこに自分たちの生きる、仕事をする喜びもあるという精神、これが日本の老舗の根本にあるということは素晴らしいことです。現代の嘆かわしい風潮の中で、この「活かし、生かされ」という精神は、組織のあり方や社会のあり方に大きな示唆を与えてくれると私は感じました。
さて、あと1か月で新年度が始まります。本年度をもって、副市長をはじめ多くの方々が退職されます。長らく市役所に奉職された皆さま方の、市政進展へのご尽力に心から感謝するとともに、残り少ない期間最後までよろしくお願い申し上げ、合わせて職員の皆さまにも、退職されます方々からさまざまな大切なことを学び取っていただきたくお願い申し上げます。「あなたが活かす、みんなで育む、安全と安心のまち 本庄 ~世のため、後のため~」。以上で、今月のメッセージを終了いたします。

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