5歳児事件検証委員会報告書の公表にあたって(令和5年7月3日)

更新日:2023年07月03日

おはようございます。7月3日、今月の月いちメッセージをお送りします。すでに皆さんご存知の通り、昨年発生した5歳児死体遺棄事件についての検証報告書の詳細版と公開版が市長に手交され、27日の記者会見に合わせ公開版を公表しました。
事件の検証は有識者7人による本庄市要保護児童対策地域協議会検証委員会において昨年7月から計8回開催されました。委員会では市や熊谷児童相談所、以降「児相」と表現します、保育園、飲食店などの関係機関、関係者から、事件の発覚に至るまでの状況を聴取し、第三者による事実の認定と、多角的な検証を実施し、課題、問題点の抽出と、改善策等の提言をまとめていただきました。改めて委員の皆様に感謝申し上げます。
今回の検証では、市や児相などの関係機関が、事件に至るまでの間、お子さんの周辺で高まっていたリスクを正確に把握できていなかったことが明らかになりました。報告書の公開に当たり市長として、特に以下3つの点についてコメントを発表しました。
1つめは市と児相との間の連携についてです。令和3年9月、市内飲食店からの通告を市と保育園が受け、その報告を受けた児相は当初この案件について「母によるネグレクトであり、同居人の男による身体的虐待」との二つの認識を持っていたことが、今回の検証で初めて明らかになりました。当初から市は児相からの「母によるネグレクト」という判断を受け、市として疑問はあったにせよ、児相の判断に基づき、保育園に子どもの見守りを依頼し、母に対してのみ、アプローチしてきた経緯があります。
報告書には「同居人(男)による身体的虐待との判断がなされていれば、同居人(男)にアプローチしたはずであり」「その後の状況が変わったと考えられる」と書いてあります。児相において、当初の一方の認識であった「身体的虐待」が、もう一方のリスクの低い「ネグレクト」に収れんされ分類されていった点はぜひ県においてさらに検証がなされるべきと、市長としてコメントしました。
同時に、報告書からは、「『母によるネグレクト』の判断に対して、市として疑問を持ったならば児相と議論を行うべきだった」さらに「児相は、本事案の対応を市に任せきりにし、市から積極的に情報を取得しようとしなかった。また、市から児相に対する情報提供も十分とは言えなかった…」との厳しいご指摘をいただき、その上で「両者が十分にコミュニケーションを取った上で、通告事案の分類や虐待者の特定、また対応方針の決定を行うこと」と改善提言をいただきました。これらの点を重く受け止め、今後の改善に活かさねばならないと強く感じております。
2つめは市民と行政との感覚のズレについてです。先ほども申し上げた市内飲食店からの通報、店内での母子及び同居人のやりとりに強い危機感を持っての通報だったにもかかわらず、報告書は「通告者の持っていた危機感、市民としての感覚を各関係機関が正確に受け止められていたとは言えず、市民と行政の感覚にズレがあった」と指摘しています。この点を私は非常に重く受け止めました。市民との認識のズレ、ギャップ、これは常に意識し、それを埋める不断の努力を重ねて行かねばなりません。
3つめとして、行政のジレンマを挙げました。この事例では、母が市や保育園に対して居場所を明かさない不安定な状態が最後まで続きました。たとえ不確かであっても情報を得ていたらば、母子が同居していたとされる家に立ち入るべきだったのではないか、そのようなご意見についても重く受け止めます。ただ、個人や家庭にどこまで入っていくことが許されるのか、現場で対応した職員には忸怩たる思いがあったし、あります。市に児相や警察と同じ権限はありません。しかし、だからといって市にその権限を付与すべきかと言えば、現実は非常に厳しいということも記者に説明しました。いずれにしても職員同士また権限のある関係機関と、意識して情報を共有し知恵を絞り、再発防止・未然防止に取り組んでいくしかありません。
コメントの最後に、非公開の詳細版で母子の過去について丹念に追跡していることを紹介しました。プライバシー等の理由から公開できませんが、様々な因果から母と子が次第に追い詰められて行くさまは、まことに痛ましく、子ども中心というかけ声には程遠い、我が国社会の残酷な現状を突き付けられた思いです。
市では今後、児童虐待の再発防止・未然防止の観点から具体的な施策の実施に加え、必要な措置を適宜講じること、また本市のみならず、広く我が国の子育て環境、制度面の改善も視野に、事件を風化させない努力を重ねることを市長として表明したところです。職員全員、ぜひ今回の報告書を他人事とせず心して受け止め、今後のあらゆる業務の改善に活かして下さい。
本事件が発生して、およそ一年半。今後の司直による厳正な判断を期しつつ、あらためてお子さんのご冥福を心からお祈りいたします。
以上で本日の月いちメッセージを終了します。暑い夏になりますが、体調にはくれぐれも留意して頑張ってください。

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