「一所懸命とは」(平成26年12月分)

更新日:2020年10月01日

 みなさんおはようございます。12月1日、早いもので今日から師走です。今月の月いちメッセージをお送りします。
 今年1月の年頭訓示で私は「健やかに」という言葉を掲げました。この言葉は、個人の心身のみならず、あらゆる事柄に適用できる大切なキーワードであると申し上げました。今年一年を振り返るのはまだ早いかも知れませんが、この言葉に恥じない一年であったか、自問自答しています。何よりまずみなさんの心身の健康は、私の最も心配するところです。先月もストレスについて色々と申し上げましたが、みなさんやご家族が無事故で病気にかからず、当たり前のように毎朝家を出る時には「行ってきます」、帰った時には「ただいま」が言える状態であって欲しい、そう常に祈っています。
 また、行政の仕事は市民の健やかな未来を創るためのものであり、財政面や将来性、あるいは倫理道徳面などから見て健全なものであるべきだし、我々の働く場も、健やかな組織、健やかな市役所でありたいし、都市の健康という視点も大切である、年頭訓示で私はこう申し上げました。顧みて、そのような市役所、そのような行政であったか、この評価は我々だけでなく市民、後世の人々の評価に待つべきところですが、少なくとも我々は一所懸命、そのようにあろうとして仕事に取り組んで来たと、私は信じています。
 さて、今私は「一所懸命」という言葉を使いました。これは普段使われる「一生懸命」の語源で、一つのところに命を懸ける、元々はかつての武士団が自らの領地を命懸けで守ったことから生まれた言葉です。この言葉が転じて一生懸命になったのですが、私自身、元の言葉である一所懸命を好んで使います。日本生まれのこの四字熟語こそ、日本人の組織や仕事に対する向き合い方の原点とも言える言葉だからです。私の知識が足りなければ訂正しますが、この一所懸命を英語に翻訳した場合の、例えばvery hardなどという言葉には、自分の持ち場を守るために命を懸けるというニュアンスは含まれないと思います。
 一所懸命、この言葉が示すところの「仕事」への向き合い方とは、自分の役割を自覚して、その役割に徹して仕事をすることだと言えます。この「一所」という言葉は内容を選びません。ですから社会に存在するどんな仕事でもそれぞれ役割があり、その役割に徹してがんばる人は評価されるべきということになります。日本ではどの職業においてもいわゆる職人気質が大切にされる風土が形成されてきましたが、これは元々一所懸命という言葉が我々の社会にあったからだと言えるでしょう。もう一つ、この「一所」という言葉は元々領土・領地の事であり、これは一人ひとりの武士にとって「私」のものではなく「公」のものです。ここから奉公という言葉も生まれるのであり、そこでは自分の地位を利用して私利私欲をむさぼることは最も卑しいとされます。
 以下は私の肌感覚での話ですが、日本社会はさまざまな問題があるとはいえ、今も多くの国民は、働く勤労者を善人だと思っており、まして公の仕事に就く人間をはなから信頼しています。仕事をする人は真面目な人、中でも公務員は公の仕事をしているのだから、地位を利用して悪いことはしないだろう、そう信じている人々が私の周りにも大勢います。
 実は広い世界を見渡せば、人の仕事への取り組みの評価以前に、厳然とした職業差別があったりします。役人は、すなわち地位と権利を必ず濫用して私利私欲を極大化する存在であるとはなから国民に思われている、そんな国そして社会もあります。
 それとは全く異なる価値観、まさに自分の仕事の役割に徹すること自体が評価される、また自らの地位を利用して私利私欲をむさぼることを最も卑しい行為とみなす、一所懸命と奉公の価値観を育んできたのが日本社会だと私は思います。だからこそ公の地位にある人の不祥事が起きると報道などで蜂の巣を突いたような騒ぎになるし、一方、現在の若年層非正規雇用の実態などが倫理的に問題ありとして取り上げられるのです。裏を返せば、これは真面目な人々が報われる質の高い価値観そして社会を維持したいという、国民の意志の表れとも言えるのではないでしょうか。
 このような事に思いを致すとき、いわゆる「持続可能な社会づくり」においては、過去から受け継がれてきた日本社会の美徳、価値観を後世に伝えて行くことが大切であり、そのためにも我々は現在の課題に真正面から向き合い、努力しなければと思うのです。我々はこれからも自らの役割に一所懸命、今そして未来の本庄市、本庄市民という公のため、奉仕することに、誇りと気概を持って日々の仕事に臨んでまいりましょう。
 以上で本年最後の月いちメッセージを終わります。年末、事故や病気にはくれぐれも気を付けて健やかにお仕事がんばってください。

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